外国人看護師の受け入れがようやく始まるようです。
少子高齢化の状況にもかかわらず、介護・看護の領域においてはかねてより、労働力不足が深刻な問題とされてきました。
労働力不足を解消するための手段として、外国人看護師の受け入れは、非常に期待されているところです。今回の受け入れは、EPA協定に基づくものですが、外国人看護師の受け入れについては、経団連の主張と看護協会の主張とが真っ向から対立しています。
両者の主張を簡潔にまとめると次のようになります。
1.経団連の主張
・海外の看護師資格者に対する国家試験の受験資格の緩和・見直しを行う
・短期間の研修としての就労のみ認められるという制限を早急に撤廃すべき
2.看護協会の主張
・日本の看護師免許を取得することが条件
・十分な日本語の能力を有すること
・日本人看護師と同等以上の条件で雇用
・看護師免許の相互承認は認めない
これに対して、日本とフィリピンとの間で締結された日比経済連携協定の内容は、次の通りです。
・国際厚生事業団(JICWELS)を唯一のあっせん機関とする。
・受入施設で就労しながら国家試験の合格を目指した研修を行う。
(但し、フィリピンでの看護師資格を有した者に限る。)
・在留期間は資格取得前3年。不合格の場合には、帰国。
・合格後は在留期間3年。但し、更新回数の制限はなし。
何か両者の間をとったような内容になっています。
とはいえ、利害の対立する問題を解決する為の最初の導入としては、多少はやむを得ないのではないかとも思います。
ただそうは言っても、やはり問題点があることは否定できません。特に、来日後3年以内の資格取得が在留更新の条件となっていますが、これは、現実的には極めて高いハードルです。
確かに、看護師の国家試験の合格率は非常に高いものがあります。しかし、それはあくまでも対象が日本人だからです。外国人であっても、日本語で試験を受験しなければなりません。
そもそも、看護学校の就業年数自体が3年ですから、英語で受験できるようになるのであればともかく、日本に来て3年以内に漢字を含む日本語で試験を受験し、かつ合格するというのは、至難の業です。
私は、せめて英語での受験を認めるべきだと考えています。このような意見に対し、看護協会は、看護業務はチームとしての業務であるため、意思疎通が極めて重要であると主張しているようです。
確かに、そのような側面があることは否定しませんが、逆に英語ができる看護師のニーズというものもあるのではないかと思います。例えば、これだけ多くの外国人が来日し滞在している以上、外国人向けの病院というものもあっても良いのではないかと思います。
現実にも、留学経験があり、英語が堪能な日本人医師は非常に多く存在しています。とすれば、英語が出来る医師と外国人看護師からなる病院があってもよさそうなものです。
看護協会の主張するように、コミュニケーションを問題とするのであれば、むしろ日本人看護師の方に英語を学んでコミュニケーションがとれるようにするというのも一つの方法でしょう。
コミュニケーションの問題は、非常に容体の急変が予測されるような分野、救急であるとか産科、小児科のような領域では、日本人と同様のコミュニケーションがとれないと危険性があるというのは、確かにその通りだと思います。
ただ、それは、資格取得後の人員配置や採用において考慮すればよいことであって、なにも資格取得段階で制限する理由とはならないのではないかと考えます。
またその他にも、今回の受け入れについては、やはり問題点が存在しています。その一つに、あまり言われておりませんが、外国人労働者の日本に対する過剰な期待をあげることができます。
外国人看護師は、来日の時点では看護助手としての扱いになります。とすると、給与水準としては、高卒の新卒学生程度とならざるを得ません。この場合の給与は、16万円から20万円程度でしょう。
フィリピンの看護師の給与については、私は存じ上げておりませんが、タイの看護師の給与で考えると、大体日本円で4万円から5万円程度になるかと思います。この場合、日本での給与は、3倍以上ですので、魅力的な金額かも知れません。
しかし、日本での生活には多くのお金が必要になりますし、また、家族への仕送りの必要もあるでしょう。そうなると、生活レベルは、極めて低いものにならざるをえません。そのうえ、日本でのサポート体制がきちんとしていなければ、食文化や生活洋式の違いにとまどうこともあるのではないかと思います。
もし、その違いにとまどい、また、日本人の中にあるアジア系の人々に対する潜在的な差別意識に接した場合、日本に対してどのような印象を持つでしょうか。場合によっては、日本に対する嫌悪感すら抱きかねないと思います。
また、特にインドネシアからの受け入れの場合、イスラムについてきちんと理解している日本人がどれほどいると言えるのでしょうか。その場合の、軋轢には計り知れないものがありえます。
私は、外国人看護師の受け入れは急務の課題であると考えておりますが、そのためには、まずはきちんとした受け入れ態勢が必要だと思います。この問題を利害の対立する両当事者の間の妥協で安易に片付けてしまうことに、非常な危惧感を覚えずにはいられないのです。